
KOTOS由良工務店 代表取締役
由良俊也氏
由良俊也氏
丹波の自然を生かした美しい風景の中に、KOTOSさんが作るのは「家」ではなく「暮らし」。
地元の森林資源を有効活用や薪ストーブのある暮らし、ウチとソトをつなぐ庭づくりなど、「家」というハード面からだけでなく、「暮らし」というソフト面からも、丹波の人と地域を元気にしたいと考えています。モノづくりにとどまらず、あんなコト、こんなコト、いろんな「コト」を提案できる会社へ。そんな思いを込めた仕事への取り組み方、姿勢について語っていただきました。
- 由良さんは3代目の社長だということですが?
- はい、創業したのは父です。私が入社したのは1990年で、その後2007年に社長就任しました。その時は、会社を受け継いだという気持ちが強かったのですが、2014年に社名を「KOTOS」に変更したその時が、自分にとっては「起業・創業」と言えるのかもしれません。それまで経営理念をはっきり考えていたわけではなかったのですが、2014年からは経営理念の大切さを実感するようになりました。
- ただ家を建てるだけではなく、「暮らし」を提案するとはどういうことですか。
- 2007年に社長に就任して2009年に、石生駅前に「natura」というモデルハウスを作りました。黒い壁を起用するなどデザイン性を重視した、車に例えるとミニバンではなくスポーツカーのような家でした。その時はデザイン性のある「家」自体を提案していたのですが、時が経つにつれ家としての本質ということについて深く考えるようになりました。そこで2011年に新たに作ったモデルハウス「うらら」では、住み心地を重視しました。大きな開口部が和の風景とつながっていくように作り、「ウッドデッキで中秋の名月を見ながら、お酒を飲む」という生活はいかがですか、と「暮らし」を提案できる家へとシフトしました。
- 生活の中のシチュエーションを提案できる会社に変わっていったのですね。
- 2014年社名変更してからはさらに「暮らし」の部分を深く追求するようになりました。2015年には春日町野上野「オリフシ村」を開村しました。村の中には4つの家を建てました。その家同士を整然と区画するのではなく、中心に井戸端会議のできる広場を設置するなど、緩やかに開かれたコミュニティになるようにしました。「暮らし」は地域の中にあるものだから、地域とつながって行くことがとても大切です。オリフシ村には、「近所づきあいをしなければならない、共有の庭はみんなで掃除、村の日役は絶対に出る」などのルールがあり、同意していただいて初めて住むことができます。丹波出身で都会に出てUターンしてきた人たちや、Iターンで来た若いファミリー層など、地域にとっては大きな力になる人たち。ここに住んでいる人たちが地域とつながってくれること、それがKOTOSが地域に貢献するということではないかと考えています。私たち自身も地域の工務店なので、住まいだけを提供して終わるのではなく、地域と付き合いつづけていかなければいけないと考えています。
- 想いを実現することも、シビアに経営することも、どちらも大切ですね。
- 信頼を得るためには、「無理をしない」ということも大切だと考えています。まず自分が健康でなければ絶対に続けられないですよね。自分を色鉛筆に例えると、好きな色ばっかり使っていたらその色だけがなくなってしまいますし、乱暴に使うとぽきっと折れてしまいます。どの色も最後まで大切に使いきることを念頭に置いて経営をしていけたら。KOTOSの社員も、たとえば11時から15時はコアタイムで職場にいるように、それ以外の出社・退社時間は自分で決めるという制度を取り入れる等、できるだけ無理せず効率的に働けるように工夫しています。「人生意気に感ず」という言葉がありますが、やりたいことがあって、誰かに喜ばれて、それなりの収入を得られたらそれで十分ではないでしょうか。